~特に贅沢をしたつもりはないけれども、カードを使いすぎて、ついつい家計の収支のバランスがおかしくなっていることってありますよね。
そのようにして借金(債務)が増えてしまった場合の処理の手続きには、個人再生、自己破産、任意整理などありますが、ほかに「特定調停」というものがあります。ですが、そんなに言われているほど万能でも簡単でもありません。ただ、弁護士を依頼しなくても本人にその知識と能力と気力があればできるということは確かです。
その特定調停をするかしないかの判断の目安の一助になればと、弁護士(仙台、宮城)からの解説です~

【ご相談内容】特定調停及び任意整理について

先日、息子が通っている小学校のママ友とランチをしました。

そのときに、実は、そのママ友の方が、年金暮らしなのに、競馬と競艇でクレジットカードを使いすぎてしまって、どうにもならなくなっているとこぼしていました。

そこで、弁護士に頼まずに、その実父が自分で裁判所に出向いて特定調停をしている、ということを聞きました。

特定調停をすれば、裁判所がうまく借金の支払いを調整してくれるとのことでした。

実は、我が家もその手の借金がございます。

別段、贅沢をしたつもりはないのです。

ですが、夫婦ともども金銭感覚があまく、何でもクレジットカードを使って買い物、旅行、各種支払いをしてしまっていたのです。

次第にリボ払いになり、それも難しくなって、カードローンも使い始めたという流れです。

アコムやアイフルなどの消費者金融は怖いので使ってませんが、かなりギリギリです。

主人の給与もあがらないので、私も可能な限り、スーパーとファミレスのパートをしております。

しかし、これ以上、世帯収入を増やすことも難しいというのが正直なところです。

そこで、特定調停にチャレンジしようかとも漠然と考えているのですが、実際、どのようなものなのでしょうか?

そのママ友の実父は、たしかに時間があるからできているのかもしれません。

私も主人も平日は仕事があるので、例えば弁護士さんに依頼するということも可能なのでしょうか?

【ご回答】

特定調停の概要

特定調停とは、債務の返済が本来の約定通りできなくなった人が、裁判所の調停委員を介して債権者と協議を行い、返済方法を見直し、再合意するための手続きです。

過去に高い利息を支払っていたような場合には、その利息を借金から差し引く計算がなされます(引き直し計算)。

ですが、任意に元本を減らすということはできません。

債権者とは、返済方法(返済額や回数等)などについて協議します。

債務者の収入等の経済的状況を踏まえて、合意に向けて協議を行い、合意ができた場合にはその内容を調書にまとめます。

そして、その合意の内容どおりに返済していくことになります。

また、合意が成立しなくても、裁判所は自らが妥当であると考えた内容の返済方法等を決定することができます。

ただ、どちらからか異議が出てしまうと効力を失いますので、裁判所もこれなら異議がなさそうだと考える場合にしか決定を出してくれません。

そうですね。

チャレンジしてみてもよろしいのではないでしょうか?

特定調停の期日は平日の日中

「チャレンジしてみてもよろしいのではないでしょうか?」という言い方になるのは、特定調停は、平日の日中に簡易裁判所で行われるものなのです。

ですから、夜しかダメ、土日しか空いていない、平日の日中の時間がとれないということですと、実際上は不可能ということになってしまうからです。

特定調停にかかる費用

費用はおそらく数千円で済むでしょう。

個人が申し立てる場合は、債権者1者につき500円程度の収入印紙と郵便切手が必要なくらいです。

特定調停の進行・手続き

裁判所の調停委員が仲介してくれるからと言って、必ず、話がまとめるということはないです。

申し立てる際には、家計の状況が分かる資料の提出を求められますが、それを調停委員が見た上で、本当に借金が支払えないのかどうなのかを判断します。

例えば、

生命保険を安くすればよいでしょう、

とか、

学資保険を解約すればいいでしょう、

とかで、「債務の返済ができなくなるおそれのある債務者」ではないと判断されるおそれもあります。

その場合には手続きが進みません。

また、必ず、調停委員の言う通りに債権者が同意してくれる、というものでもありません。

17条決定

ただ、双方の折り合いがつかないときでも、裁判所が相当と考える分割返済計画を決定してくれる場合があります。

これを、「17条決定」(調停に代わる決定) と言います。

なぜ、 調停に代わる裁判所の決定を 「17条決定」と言うのかと言うと、民事調停法という法律の17条に規定がある決定だからです。

” 第17条 裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。”

よく使われるのは、双方が内容自体には同意しているけど、忙しくて期日に行けない場合等か、双方の意見の差がごくわずかの場合に、裁判所が民事調停委員の意見を聞きながら、決定を出します。

ただし、当事者は、決定から2週間以内に17条決定に対する異議申立てをすることができます。

そして、異議申立があれば、その分割返済計画案等はすべて効力を失います。

そのことが、民事調停法18条に規定されています。

ただし、「17条決定」と言うのに対して、「18条異議申し立て」とは誰も言わないです。

”18条 前条の決定に対しては、当事者又は利害関係人は、異議の申立てをすることができる。その期間は、当事者が決定の告知を受けた日から二週間とする。

・・・・・・

4 適法な異議の申立てがあったときは、前条の決定は、その効力を失う。

5 第一項の期間内に異議の申立てがないときは、前条の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

特定調停に弁護士をつけるか?

もちろん、弁護士を代理人に立てることも可能は可能です。

ですが、弁護士費用がかかりますし、裁判所を介しての手続きですので、時間もかかります。

弁護士を立てる気がおありなら、任意整理の方がいいと思います。

特定調停よりも任意整理の方がよい理由

(1)任意整理なら、家計収支表、給与明細、源泉徴収票、通帳のコピー、請求書、領収証等の資料を準備する手間が不要です。

(2)任意整理なら、裁判所の期日に合わせる必要もありません。

(そもそも、裁判所に出向く必要がありません)

(3)任意整理なら、仮に返済が遅れることがあってもいきなり強制執行されません。

特定調停で話がまとまった場合には、「調停調書」と言って、きちんとした裁判所の公的な書類が作成されるのですが、これは判決と同じ効力を持ちます。

つまり、万が一、調停調書の内容に従った返済ができないと、いきなり、給与の差し押さえとか強制執行がなされる恐れがあります。

もちろん、任意整理でも最終的には債権者と和解をするので、その和解内容に従った返済はしなければならないのですが、やはり、人生、何があるか分からないので、いきなり差し押さえのリスクは可能であれば避けたいところです。

(4)弁護士費用も任意整理より特定調停の方が高くなります。

結論として、特定調停は、弁護士に頼まずに自分で調停委員の言うことに従いながらもなんとかできるというがメリットなのであり、弁護士をつけて特定調停をするメリットはないと思います。

~以上、差し出がましいようですが、もし、ご質問者様ご夫婦が、家計収支表、給与明細、源泉徴収票、通帳のコピー、請求書、領収証等の資料を準備する気力があるのであれば、個人再生をお勧めします。個人再生は破産とは異なり、およそ今、手元にある保険や車や果ては不動産といった資産を売り払って現金化させられるということもないですし、他方で単に月々の支払額を減らして返済期間を延ばすだけの任意整理とも異なり、債務の大幅な免除を受けることができます。
従いまして、任意整理と破産の中間的な手続きとして、使い勝手がよい手続きです。ご検討ください、というのが、弁護士(仙台、宮城)からの解説になります。特定調停するよりはよほどいいと思います~